在り来りの対処法しか口に出来ずにいると、黙って俺の話を聞いていたキャプテンが口を開いた。
「俺が、ポイントガードをやります」
「…イザーク!?」
「うちのツインガード、完全に動きを読まれています…俺が流れを変えます」
「…だが」
自分を信じて欲しいと、アイスブルーが告げていた。
「メンバー、入れ替えさせてください」
「…解った」
イザークの指示で、レイが下げられた。
変わりに入ったのが、オロール。
自分の代わりに、フォワードをやらせる気らしい。
コートへ戻る直前、イザークは厳しい目を、一瞬だけ微かに緩めた。
「…貴方の夢の為にも、こんな所で立ち止まっては居られないんです…」
「イザーク」
「必ず、勝ちます」
走り去る背中を、黙って見送る事しか、俺には出来なかった。
オールラウンダーだとは思っていたけれど、見事な采配だった。
完全に、攻守が入れ替わっている。
イザークのゲームメイクなんて、相手のデータには、全く無かった筈だ。
明らかに、戸惑いが感じられる。
出逢った当初に、俺がイザークに感じた欠点は、粗全て克服させている。
腰高だったドリブルは、理想的なフォームになった。
強豪校と雖も、ディフェンスは容易ではないだろう。
ワンマンなプレイもしていない。
周囲を上手く使って、攻撃させている。
けれど、流石に相手もインハイ常連校だ。
押せ押せのムードだったのは、第二クォーターまでだった。
第三クォーターでは、攻守が常に入れ替わり、取っては取り返すという、ハイスコアゲーム。
第四クォーターになると、両校共、疲労の色が濃い。
後は、気力の勝負という感じだった。
イザークの代わりに攻撃の要となっていた、シンのシュートが落ち始めた。
根性はあるが、未だ二年の上、あの身長だ。
体力が、限界に来ているのだろう。
普段の俺だったら、躊躇わずに、シンを下げただろう。
無茶をさせて、その結果、シンの将来を潰してしまう事を恐れて。
けれど、俺は動かない。
自らを信じろと告げた、あのアイスブルーに、この試合の采配を全て託した。