拮抗していた勝負に決着を着けたのは、試合終了間際の笛とほぼ同時に叩き込まれた、イザークのシュートだった。
切り替わった電光掲示板の数字に、歓声が沸く。
一挙一動を見逃さず、イザークを凝視していた視界が滲んだ。
何とか息を整えて戻ってきたメンバーに、何か賛辞をと思っても、感無量で何一つ、気の利いた科白が出てこない。
イザークが、僅かに笑んだ。
「…見て頂けましたか」
「…ああ、確かに見届けたよ…」
「…未だですよ…未だ、終わりじゃない…」
「…解ってる…ありがとう…」
それ以上は言葉にならず、抱き寄せて、肩に顔を埋めた。
ホテルへ引き上げる途中、クインティリスのメンバーと鉢合わせる。
俺はアデス先生に生徒の引率を頼んで、ラスティの元へ走った。
ヘッドコーチの教師に、ラスティも、先に戻っていてください、直ぐに戻りますと告げている。
落ち着いて話が出来る場所に…と思ったけれど、ラスティは此処で良いと、誰も居ない通路で立ち止まった。
「…ラスティ、俺…」
「…ああ、もう何も言わなくて良いから…」
「…だが」
「…聞かなくても、返事は解ったから、言わなくていい」
「…ゴメン…俺…」
「…だから言わなくても良いって」
「…お前の事、凄く好きだよ…だけど…」
「トモダチとしてしか、見られないって言うんだろ?」
「ああ」
「…まあ、解ってたけどね…俺じゃ、あんな顔、させらんないし…」
「ラスティ?」
「…という事で、話は御終い…早く帰りなよ…明日は準々決だろ?」
「待ってくれ、ラスティ」
「…もう逢わないって、言ったっしょ?」
「嫌だ!!!…確かに、お前の事、友達としてしか見られないけど、もう逢えないなんて、俺は絶対に嫌だ!!!」
「…あんな事あったのに、今更、お友達になんて、戻れないだろ?」
「…何が有ろうと、お前は俺の一番の親友だ!!!」
「…マブダチになりたかった訳じゃないんだけどね…まぁ良いや、アスラン」
「何だ」
「気持ちの整理つける時間だけ、くれよ…フツーに友達出来る様になったら、遊びに行くから」
「ああ、何時でも待ってる」
去っていく背中を、少しばかりの寂しさと共に見送っていると、肩を叩かれた。
振り返れば、エースが微妙な表情をして立っている。
「明日の作戦指示を、伺いたいのですが」
「ああ、帰ろう」
明るく答えると、アイスブルーが優しい光を放った。