止せと言われたから、チームの話題は避けた。
けれど、昔の思い出を語り始めれば、キリは無い。
結局俺は、アデス先生の厚意に甘え倒す格好で、朝帰りをしていた。
朝食のバイキングで、その事を詫びると、私でも役に立てて光栄でした、楽しんで頂けたのでしたら幸いですと、アデス先生は穏やかに笑った。
トレイを持ったイザークと擦れ違う。
味噌汁、ご飯、納豆に漬物、お浸し、そしてシャケ。
本人の好みが良く解る、和食で纏められたメニュー。
「…おはよう」
「…随分遅い、ご帰還ですね」
素っ気無い言葉に、咎める様な響きを感じた。
「…え、ああ、済まなかった…大会中に浮かれてしまって」
「…今日は試合もありませんし、別に構いませんが…」
言い捨てるとイザークは、足早に立ち去ってしまう。
その日は一日中、何と無く気不味くて、他校の試合観戦にも身が入らなかった。
明日は二回戦。
策を練ろうと、夕方にイザークの部屋を訪ねると、ディアッカしか居ない。
イザークに用が有るなんて、一言も言っていないのに、キャプテンなら、コンビニ行きましたよと言われる。
礼を言って、部屋を出た。
このホテル内にある自販機には、好みの飲料が無く、俺もコンビニで購入しては、部屋に持ち込んでいる。
恐らくイザークも、同様なのだろう。
そう思ったら、自分も欲しくなり、ホテルを出た。
この近辺に、コンビニは、然程多くない。
運が良ければ、出先でイザークに遇えるだろう。
そんな事を考えて歩いていたら、知った顔に出会う。
「…ラスティ?」
「お晩です…ってか」
「どうして、お前がこんな所に?」
クインティリス学園の宿舎は、会場を挟んで反対側だ。
「…お前に会いにきた」
「…悪いが、明日は試合があるから、今日は付き合えないぞ」
「…解ってる、俺んトコもそうだし」
「なら、どうして」
「…昨夜、伝え忘れた事があって…直ぐに済む」
「伝え忘れた事?」
不意に引き寄せられて、口付けられた。
「お前が、好きだ」
耳元で囁く声に、言葉を失う。
放心状態の俺の視界に、やはり呆然と立ち尽くす、アイスブルーが映った。