ラスティが留学してからの生活を、事細かに訊いた。
生活習慣の違いに驚き、変わった風習に笑う。
昔から変わらない、飽きさせない話術。
でも、決して一方的には喋らない。
俺が重い口を開けば、丁寧に相槌を打ちながら、根気強く最後まで、話を聞いてくれる。
食事が終わっても話し足りず、更に小さなバーへと、場所を移動した。

「…ラスティ、そういうのが好きなのか」
真っ赤なブラッディマリー。
「…何か、お前って、芋焼酎とか、そういうのが好きなのかと思ってた」
「時と場合に依るっしょ?…こういう店で、芋焼酎とか、訳解ん無いよ…ホント、変わんないよね、アスラン」
「幾ら俺だって、こんな店で、芋焼酎なんて頼まないぞ」
眼の前にあるのは、ジンフィズ。
ジンは、大学時代に呑み慣れた味。
腐っていた頃、部屋で独り、ストレートのまま、瓶で呷っていた。
…今は無論、そんな事はしていない。
「…楽しそうだね、アスラン」
「ラスティ?」
クインティリス学園に雇われた事情を、面白可笑しく語ってくれたラスティに、俺もバスケ部の顧問になった経緯を話した。
きつい瞳の少年と、出逢った事。
勝負を挑まれて、受けた事。
教師の筈の自分が、逆に生徒に説教された事。
そんな話を、気付けば熱く語っていたらしい。
「でも、良いのかな、アスラン」
「…何が?」
「俺、一応ライバル校のコーチだよ?…そんな、エースの秘密、思いっきり暴露しちゃったら、不味いっしょ?」
「…ああ、そうだったっけ…でも、秘密って程の事でも…」
「あのさぁ、お前が如何思ってんのかは知らないけど、お前んトコのエース、結構狙われてんだよ…初出場かもしんないけど、一回戦で実力が折り紙付きなのは、充分に解ったし」
「ああ、アイツの才能は本物だ。何れは、ナショナルチームの要になるだろう」
「…だから惚気は解ったから、そういう事じゃなくて、メンタル部分で攻撃の隙とか、与えちゃ駄目だって事」
「ラスティ?」
「お前の話、聞いてる限りじゃ、そっちのエースの弱点って、思いっきりお前じゃん」
「弱点?」
「お前に何か有ったら、多分、ガタガタになると思うよ」
「…まさか、そんな」
「俺の事、信頼してくれんのは嬉しいけど、チームの話は、直接当たるまで、止めといた方が良いと思うけどね」