ラスティの指摘に、思わず言葉を失う。
「…やっぱり」
「…」
「…ああ、言いたくないのなら、言わなくて良いよ…っていうか、お前頑固だから、言う気がなければ、口が裂けても言わないだろ?」
「…そんなんじゃない…」
「…」
「…どうせ、誰か事情を知っている奴に訊けば、解ってしまう事だから…」
「アスラン?」
「…俺、もうバスケ出来ないんだ…事故で、脚痛めて…」
「…事故!?」
「…切断逃れたのが奇跡って位、左脚ぐちゃぐちゃになっちゃって…」
「…だけど、お前…」
「人工関節入れてあるから、普通に歩ける…だけど、急には動けないし…長時間酷使すると左脚全体に痺れが出て、使い物にならない…」
以前の俺だったら、こんな風に淡々と脚の事を語るなんて、恐らく出来なかっただろう。
況して、嘗てのチームメイト相手に…だなんて。
「もう、ボール見るのも嫌で、ずっとバスケからは、離れてた」
「…でも、帰って来たんだ?」
「…他に出来る事、無いって解ったし…」
「…そうだな、バスケやってないお前なんて、想像もつかないし」
「…だろう?…俺も、そう思う」
「じゃ、お前の復帰祝いに、飯奢っちゃう」
「飯!?」
「今晩、戻らなくても良いって、あのセンセ、言ってたじゃん」
「…まぁ確かに、そう言ってはいたけど…」
「どうせ明日、試合無いだろ?」
「…ああ」
結局、その場の勢いに任せて、場所を変えた先は、小さなレストラン。
飲食店に関しては、ラスティに任せておけば、大抵外れはない。
嗅覚が優れているのか、勘が良いのか、初めての店でも、味に関しては文句無しの処ばかりを、あっさりと選び出す。
今回も多分に漏れず、値段の割に、味も雰囲気も申し分ない。
そして、ラスティと一緒に食事をすると、いつも恒例なのが、半分こ。
違うメニューを二種類注文し、出された品を分け合って、半分づつ食べるという、居酒屋の肴の様な、奇妙な食事風景。
メニューが一種類しかない寄宿舎の食事では、流石にやらなかったけれど、学食では良くやっていた。
俺がAランチなら、ラスティはBランチ。
メインディッシュのハンバーグと酢豚が、サイドメニューの金平とポテトサラダが、それぞれ、半分に分けられる。
同じ量なら、色々な種類の物が食べたいという、ラスティの希望で、何時の間にかそうなった。
才能は健在だなと、綺麗に半分に分けられた皿のパスタに、舌鼓を打つ。
当ったり前じゃん、人生は喰う事が全て…と笑うラスティは、あの頃と何も変わっていなかった。