準決勝に残っているチームに関しては、俺自身も幾つか試合を見ている。
マネージャーに映像記録を、残しておく様にも指示は出してあった。
観戦出来なかった試合の分も、夜間に確認はしてある。
前回の一件で、すっかり信用を失くしてしまったのか、イザークは職員用の昇降口前で待っていた。
一緒に帰るのは、久しぶりだ。
イザークのマンションを訪ねるのも、あの怪我の時以来、初めてだった。
アールグレイのアイスティーを淹れて貰い、紙を広げて、作戦会議。
白い紙に、イザークがコートを書き込む。
部屋に置かれていたチェスの駒を借りて、並べた。
白い駒を自軍に見立てて、動かしてみせる。
黒い駒は、敵チーム。
「最近、シンにマークが集中している。宣伝効果、効いているみたいだな」
「俺にも一枚位は、付いていますけど」
「一枚位なら、抜くのも訳無いだろうに」
「ええ、ウインターカップまでは、最低でも二枚付いていましたから」
「でも抜いても、シュートには行かない」
「抜けば、シン達に付いているマークも、こっちに来ますから」
「それで、シンに打たせる…か」
「はい」
「そろそろ、本領発揮しないか、キャプテン」
「…はい」
予選リーグ上位四チームで、総当たり戦。
その中の二チームが、本戦へと駒を進める。
狙うのは当然、予選一位通過。
「最初に当たるチームだが、確か、対戦は初めてだったな?」
「はい」
「なら、マークはシンに集中するだろう」
「でしょうね」
「シンを囮にして、掻き回してやると良い」
「はい」
「第一クォーターと第二クォーター、ニコルは温存して、マシューを使おう」
「インサイド攻めですか」
「そう、そしてあちらが慣れてきた頃に、ニコルを入れる。外からの攻撃に慣れていない相手には、効果があるだろう」
「はい」
「此処まで勝ち上がってきた経緯を見る限り、一番手強いのが初戦の相手だ。」
「俺も、そう思います」
打てば響く様な、心地良い言葉のキャッチボール。
大学で燻っていた四年間、すっかり忘れていた感覚だった。