午後練はマネージャーに任せて、放課後、俺は再び病院へ向かった。
訪ねた病室は、蛻の殻。
ナースステーションで事情を訊くと、イザークは既に退院したとの事だった。

携帯は電源が切られているらしく、何度掛けても通じない。
自宅マンションを訪ねたが、留守だった。
仕方なく、学校へ戻る。
体育館に戻ると、キャプテンが居らずとも、練習は滞りなく進んでいた。

イザークが学校へ来ない。
手首を傷めていたから、どの道、練習に参加は出来ないが、学校にも姿を見せていないらしい。
31Rの担任であるモラシム先生に訊くと、暫く欠席するとの連絡が、自宅から入っているという。
やはり、実家へ戻っていたのか。

三日経っても、登校して来ないイザーク。
俺はモラシム先生に、イザークの自宅の住所を聞いた。
態々行くのか…と、言わんばかりの視線から目を逸らす。

丁度週末だった事も有り、俺は電車を乗り継いで、教えて貰ったイザークの実家へと向かった。
通って通えない事は無いとディアッカは言ったが、この道のりを毎日は辛いだろう。
片道二時間弱。
電車が苦手な事を差し引いても、正直、俺なら遠慮したい。

ローカルな駅前は、タクシーすら居ない。
無人駅の為、駅員にも訊けず、途方に暮れていると、地元民らしい人が通り掛った。
手を振って声を掛け、駆け寄って住所を告げる。
どっちへ行けば良いのかと。
住所しか言わなかったのに、相手は後ろを指差して答えた。
ジュール家なら、この先一本道ですよ…と。

言われた通りに歩いていくと、イザークの自宅は、呆気無いほど簡単に見付かった。
長く続く塀が途切れると、突然現れた荘厳な門。
あの距離が、全部個人所有の敷地!?
閉じられた門に、歩み寄る。
インターフォンを見付け、意を決してボタンを押した。
機械音声で、氏素性を問い掛けて来る。
送話機に向かって、口を開いた。
「ヴェサリウス学院で教員をしております、アスラン=ザラです」