何か有ると、つい、此処に来てしまう。
宵闇の中、月光に反射する、ストリートバスケのリング。
考えている事も、何時も同じ。
アイスブルーの瞳を持つ、少年の事ばかり。

こんな風ではいけないと、自分で自分を叱咤する。
今考えるべきことは、あの子達をインハイへ連れて行く事だけだ。
イザークの事も、家人に反対されているとはいえ、学校のクラブ活動としての枠内に収まる話ならば、黙認されていると考えても良いのだろう。
なら、俺に出来ることは、約束を守って、イザークをインハイへ導く事しかない。

そうやって前向きに思考を切り換え様としても、未練がましく同じ事を考えていたらしい。
ぼんやりしていると、指摘される事が増えた。
当の本人であるイザークも、怪訝な眼差しを向けている。
ちょっと疲れているだけだと、曖昧に誤魔化した。
けれど、学院内で唯一、俺の過去を知るイザークには、余計に心配を掛けてしまっている様だった。
 
片付けを済ませ、帰途に着く。
最近、良く眠れない所為か、あまり食欲も湧かない。
微かに眩暈がするのは、本当に疲れているからかもしれなかった。
但し、肉体的にではなく、精神的にだけれど。

ふらふらと道路を横断中、耳に届いた急ブレーキの音。
直ぐ傍に、大型トラック。

咄嗟に避け様と動いたものの、左脚の反応が遅れる。
足が縺れた。

もう駄目だ…と思った瞬間、聞こえた声。
「先生っっ!!!」
同時に、突き飛ばされた感触。

一瞬、何が起こったのか判らなかった。
ノロノロと顔を上げると、急停車で横滑りして、斜めに止まっているトラックが、先ず眼に入る。
タイヤの手前に、学院指定の鞄がひとつ。
その直ぐ傍に、広がる銀髪。

「…イザークっっっ!?」