五月も下旬になると、風も無く晴れた日は結構暑い。
中間テスト上位成績者の席次が、廊下に貼り出されていた。
こんなえげつない事をする学校が未だ有ったのかと、感心するのと同時に、知っている名前が結構多いのにも気付く。
三年の理系は、主席がイザーク、五位にディアッカ。
文系の主席に、ニコル。
二年の理系では、主席がレイで、次席がシホ、四位にフレイ、ギリギリ十位にシンの名もある。
文系は、七位にルナマリアの名前があった。
この学院のバスケ部員は、男女共に文武両道だったらしい。
自分達とは豪い違いだと、思わず笑いが漏れる。
スポーツ推薦の連中ばかりの、スポーツクラス。
分類上は理系クラスのひとつだったけれど、○×の二択問題で『酸素は燃える』に丸を付ける様な連中ばかりだったのだ。
一般受験で大学に進んだのなんて、バスケ部では恐らく、自分一人ではないだろうか。
でも、その分、皆、バスケが好きで、早朝から夜中までの練習が連日続いても、誰一人逃げなかった。
血反吐吐くまで練習させられても、辞めたいなんて思った事は一度も無かった。
楽しくて、楽しくて、幸せ…だった。
俺の人生の全てだったと言っても、過言ではない、バスケ。
奪われて、絶望して、そして見つけた光明。
俺の夢を実現してくれる、体現者。
…けれど。
『アイツは、家族にバスケやる事反対されてて、だからこんなガリ勉校に押し込まれた』
あれきり、オロールの言葉が、脳裏に焼き付いて離れない。
『貴方の手足の代わりを、務めてみせます。その代わり、貴方も俺の頭脳になってください』
『…ジュール』
『貴方の夢、二人で叶えましょう』
インハイは、未だ良い。
あれは、学校のクラブ活動の一環だ。
でも、ナショナルチームとなれば、そうはいかない。
何故、疑問に思わなかったのだろう。
あんなにもバスケが好きで、あれ程の才能を持った人間が、ナショナルチームを、全く意識していなかった事に。