手痛い言葉だった。
「やる気がない…か」
「案の定、イザークとも決裂したみたいでしたので、良い機会ですし、辞めさせて貰いました」
「決裂なんて、していないよ」
「…そうですね。あの頑固なイザークが、先生の指示には素直に従っていますし…先日の試合…あれも、先生の立てた作戦でしょう?」
「違う」
「え?」
「あれは全部、イザーク自身の判断だよ」
「イザークが、自分からアシスト役を、引き受けたって言うんですか?」
「あそこまでやると、アシストというより、既にゲームメーカーだけどね」
「イザーク、ガードに転向する気なんですか?」
「確かにイザークはオールラウンダーだけど、性格的には、フォワード向きだと思うよ…エースの条件も、備えているしね」
「エースの条件?」
「ここぞと言う時に、点が取れるって事」
「じゃ、あの試合では、出し惜しみしていたって事ですか!?」
「…そうかもしれない。現にイザークは一本もシュートを打っていないのに、勝ってしまったし…でも、良い宣伝になると思わないか?…こんな試合を続けていれば、間違いなく公式戦でも、マークがシンに集中して、その分、イザークがフリーになれる」
「それはそうですが…」
「最後の夏だと、何度も言っていたよ。何としても勝ちたいんだろう」
「…」
「俺も勝たせてやりたいと思う…決して後悔が残らない様に」
「…」
「オロール、君は後悔しないか…?」
「…しません」
「…そうか、それは羨ましいな」
「先生?」
「受験勉強、頑張ってくれ。それから、気が変わったら、何時でも戻って来てくれて構わないから」
翌日、オロールが入部の手続きに来た。
後悔したくないからです。
そう言って。
最初の練習試合から、約一ヵ月。
漸く、男バス部員は、元のメンバーに戻った。
一見クールで解り難いが、イザークも嬉しそうにしている。
やはり二年間一緒にやってきた仲間達と共に、インハイに行きたいのだろう。
最後の夏は、直ぐ其処まで来ていた。