漸く我に返った俺が叫ぶと、イザークは一旦動きを止めた。
けれど、もうその時には既に、ズボンは下ろされており、下着だけの脚が、白熱灯の下、露にされていた。
「…見るな…頼むから、見ないで…くれ…」
醜い脚。
ズタズタの傷痕。
あまりのおぞましさに、初めて目の当たりにした時、何度も吐いた。
今だって、直視する勇気なんて無いから、風呂場でも見ない。
驚愕に歪められているであろう、イザークの顔を見たくなくて、両手で顔を覆って、眼を瞑る。
頼むから、見ないでくれ。
お前に、化け物を見るような眼で見られるなんて。
そんな事、俺には…。
「…リハビリ、辛かったでしょう?」
優しい、穏やかな声がした。
緩々と手を下ろし、眼を開ける。
「歩ける様になるのだって、大変だったでしょうに…頑張ったんですね」
イザークが、傷痕の上をそっと撫でる。
「…あっ」
自分でも、殆ど触れない箇所に触られた刺激に驚いて、声を上げると、イザークは慌てて、手を引っ込めた。
「…すみません、痛かったですか?」
「…大…丈夫…痛く…無い…でも…気持ち…悪い…だろ?」
「どうして?」
「…だって、こんな…」
化け物みたいなという言葉は、口に出来なかった。
「でも、これが今の貴方でしょう?…昔みたいに、華麗なプレイは出来ないかもしれないけれど、それでも一生懸命生きてきた、貴方の大切な脚でしょう?」
「…イザーク」
込み上げる感情を堪えていると、また、抱き込まれる。
「俺相手に今更、格好をつけても、仕方が無いでしょう?」
…そうだった。
この胸の主には、無様で格好悪い姿を、見られてばかりだ。
そう思った途端、気が緩んだ。
溢れる嗚咽。
わあわあと子供の様に泣きじゃくる俺の背を、そっと擦り続けるイザーク。
事故に遭って以来、初めて俺は、左脚を自分自身の一部として受け入れられた。



「イザーク、強引に突っ込むな。仲間を信じろ。全部自分でやろうとするな」
「はいっ」
俺の言葉に、バックに一度ボールを戻したイザークが、再びパスを受け、鮮やかなダンクを決める。
新たに申し込んだ、別の高校との練習試合。
紅のユニフォームが、空を舞った。

TRY AGAIN