ざわめきの中、凛とした声がした。
「シンのポジションは、フォワードですか?」
声の主は当然、この場に於いて、一番冷静な人間。
「そうだよ、キャプテン」
更に酷くなる、困惑の声。
未だ二年。
経験があるとはいえ、入部したばかり。
一年のブランク。
何より、身長が172センチしかない。
「…先生、ガードなら未だしも、フォワードは無理が有り過ぎませんか」
イザークですら、この反応だ。
他のメンバーは全員、反対意見だろう。
「言った筈だ。俺は、このチームを、インハイで優勝させる為に、この役目を引き受けたと」
「…今年のインハイは、諦める…という事ですか」
低い声がした。
妥協を許さないアイスブルーが、俺をきつく見据えている。
「そんな事は、言っていない」
「そういう事でしょう!?…レイなら、未だ解ります。でも、シンが今年のインハイに間に合うと、本気で思っていらっしゃるんですか!?」
「現在のメンバー内で出来る、最善の選択だ」

気不味い空気が流れたまま、練習試合当日を迎えた。
鮮やかな紅のユニフォーム。
一番似合う筈の、イザークの表情が冴えない。
緊張した面持ちの、二年生二人。
試合が始まっても、硬さが取れない。
あまりにもぎこちないレイの動きを見かねたニコルが、ゲームメイクを全て引き受けていた。
普段なら難無く決めていた、シンのシュートが全く入らない。


結果は惜敗。
慣れない編成のチームで、イザークは随分頑張っていた。
主だった敗因は、試合経験の足りない二年。
ファイブファールで退場させられた、シンだった。


その日のうちに、三年部員五名から、俺の元に退部届が提出された。