「女子部のキャプテンは、誰かな?」
問い掛けると、赤毛でショートカットの子が、挙手をした。
「私です。L27R、ルナマリア=ホークです」
男バスのマネージャーに喰って掛かった、勝気そうな赤毛のセミロングの子が、そうではないかと思っていたが、どうやら違ったらしい。
爽やかな印象の、元気な子だ。
「お遊び…と言われているようだけど、実際どうなの?」
「どう…と言いますと?」
「正直な所、俺は男バスをインハイで優勝させる為に、この役目を引き受けた。行き掛かり上、女バスも引き受ける事になったけれど、先刻彼女が言った通り、お遊びの仲良しクラブでしかないというのなら、指導は必要最小限にさせて貰って、男バスに専念したい」
「そんな、私達、違います」
「公式戦には未だ出てませんけど、本気でやってます」
「私達、強くなりたいんです」
「一年と二年しか居ませんけど、それでも私達なりに頑張っているんです」
次々と上がる声に、思わず笑みが漏れる。
「…メインは男バスだというのは、変わらない。だけど、君達が本気で取り組む姿勢が在るのなら、来年のインハイに連れて行ってあげるよ」
「私達が、インハイ!?」
「叶うかどうかは、君達の努力次第だけどね。それに、この学校は進学校だ。三年の夏休みまで、部活に明け暮れる覚悟も必要だよ?」
「やります」
「お願いします」
「頑張ります」
満足のいく答えに、俺は先刻、男バスのマネージャーに喰って掛かった子に視線を移した。
「OK。じゃ、端から自己紹介して貰えるかな」
「フレイ=アルスター、L26、スモールフォワードです」
「あ、ポジションは言わなくて良い」
「ザラ先生?」
「先入観なく、君達のプレイが見たい。その上で、向いていると思われるポジションに当てるから」
クラスと名前だけの自己紹介が、女バスで続く。
最後にツインテールの子が、マネージャーですと名乗った。
苗字が同じだし、何処と無く似ているから、女バスキャプテンの妹なのだろう。
「男バスも頼む」
勝気なマネージャーに、声を掛ける。
「S22、シホ=ハーネンフースです」
マネージャーに習い、男バスのメンバーも、次々と名乗りを上げていった。
「S31のイザーク=ジュールです」 最後に名乗った彼に、出逢った、あの日の記憶が蘇る。

…そう、あの日に全ては始まった。