あの大学へ入った目的は、二年先輩だったミゲル=アイマンに誘われたからだ。
俺がディセンベル学園に入学した時、バスケ部のキャプテンだった人で、俺も随分世話になった。
ナショナルチームにも推薦されていた彼に、来いと言われ、入学した大学。
スポーツ推薦で声を掛けてきてくれた大学は、他に幾つもあったけれど、敢えて一般入試を受けて、彼の元へと進んだ。
車両事故が起きたのは、入学して未だ間も無い頃。
スポーツ推薦の特待生だったなら、大学を出されてしまったかもしれない。
けれど幸いな事に俺は、一般入試枠で入って来た人間だ。
付けられていた準特待生の肩書を外して貰う事で、大学への残留は問題なく叶った。

  あまり深くは考えてはいなかったが、教育学部に居た。
バスケだけで生涯、食べていく事は難しい。
  将来はクラブコーチにでもなれればと、思っていた。 教育学部を選んだのは、そんな理由だった筈だ。

アパートに移ってから、欠席で遅れた分を取り戻す事に、必死になった。
バスケの事を考えなくて済む様に、単位取得に躍起になり、気付けば手にしていた、教員免許。
元々得意だった工学系の大学を受けて、やり直すという選択肢もあった筈なのに、当時の俺は、そんな事すら思い付けなかった。
唯、もうバスケは出来ないのだという事だけが、心に重く圧し掛かって、息が出来ない。
眼の前に出された課題を消化していくのが精一杯で、将来の事なんて、全く考えられなかった。

結果として、俺は教師になった。
アパートの沿線というだけの理由で、あっさり選んだヴェサリウス学院。
何となく希望を出した学校に採用が叶い、現在に至っている。

進学校だから、学校のクラブ活動なんて、所詮お遊び程度だと、高を括っていた。
でも、あのチームは、本気でインハイを狙っている。
強豪チームが数多居る全国で、頂点に立つべく、日々努力しているのだ。
その中心に居るのが、彼。
ドライアイスの様だ…と思う。
冷たい筈なのに、触れると熱い。
クールで冷静。
でも、本質は酷く熱い、情熱の塊。

事故の後、ずっと腫れ物に触る様に、扱われてきた。
それが煩わしくて、昔の仲間とは自然と疎遠になった。
新たに知り合った人間にも、深く関わらない様に距離を置いた。

…あんな風に、自分に真正面からぶつかって来る様な相手に、出逢うなんて。

TRY AGAIN