真っ直ぐ俺に向かって、突っ込んでくる。
正々堂々、正面突破狙い。
彼はオールラウンダーの様だが、基本のポジションは恐らく、スモールフォワードだ。
ポイントゲッターとして、チームを引っ張ってきたのだろう。
惜しむらくは、このチームには、ゲームメーカーとなるべき、司令塔が居ない事。
一から十まで、彼一人でやっているワンマンチームが、全国で通用する筈がないのだ。
なのに彼は、既に全国を射程に捉えている。
それ程実力のあるプレイヤーと、今の自分が、幾らハンデを付けて貰っているとはいえ、勝負になるのだろうか。
今の自分が、彼に勝るものが有るとしたら、経験値だけだ。
彼が何歳から、バスケを始めたのかは知らないが、幼稚舎のミニバスから数えて、通算13年もバスケ一筋だった、自分より長い等と言う事は、まさかあるまい。
それに、俺が通っていたディセンベル学園は、インハイ常連のバスケ名門校。
ハイレベルな大会で、天才と呼ばれた数多の人間を、相手にしてきた数だけは、負ける筈がない。
それに、彼にだって、欠点がない訳ではないのだ。
シュートフォームは綺麗だが、ドリブルはやや腰高。
ディフェンス側にとっては、遣り易い相手。
動きを止められれば、カットは訳ない。
止めた…と思った瞬間、フェイントでかわされる。
でもそんな事は、此方も予想済みだから、逃げ場を塞いでやった。
躯を捻って、更に逃げる、彼。
抜群のボディコントロールだ。
ウエイトを6キロも乗せていて、この動きとは。
此方からフェイントを仕掛けてやると、引っ掛かった様に見せ掛けて、突破口を作ろうとしている。
勝負は拮抗したまま、時間だけが過ぎていく。
俺には、ひとつ特技があった。
体内時計である。
試合中も、時計を見なくても、残り時間の見当は、大体ついた。
況して、5分なんて短い時間であれば、10秒と狂う事はない。
貰った…と思った。
残り時間は20秒を切っている。
内心で笑みを浮かべた瞬間、全身に痺れが走った。